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【AIガバナンス実装WG】AIガバナンスナビver2.0の概要と自己診断結果概要を公表

AIガバナンス協会は2026年7月27日、会員企業を対象に実施した「AIガバナンスナビver2.0」の自己診断の集計結果を公表しました。今回は計57件の回答が集まり、全体平均は2.72点となりました。

前回のver1.1(2.50点)から上昇し、すべての領域で点数が向上した一方、AIエージェントなど自律性の高いAIへの対応や、透明性・アカウンタビリティの確保には課題が残ることも明らかになりました。

【AIガバナンスナビの資料の全文】‍

AIガバナンスナビver2.0の概要と自己診断結果概要の全文はこちら

【AIガバナンスナビの概要】‍

AIガバナンスナビは、AI事業者のAIガバナンス構築の取組について、成熟度を自己診断するためのチェッカーです。激しい技術・制度の変化、規範・ガイダンスの乱立、企業の自主的な取組への期待といった課題に、会員企業の共有知で取り組む試みとして運用されています。

会員企業は、政策・標準や他の会員企業の取組状況をベンチマークとして、自社の強み・弱みを把握できます。診断結果は協会活動に還元され、次回以降のナビの改善や企業支援に反映されます。

【ver2.0の構成と変更点】

ver2.0は、回答・記入対象となるExcelシート(本編)と、付属文書2点(記入の手引き、用語・関連情報集)で構成されています。本編は「共通」「グループガバナンス」「標準類マッピング」から成り、各項目を0点、1点、3点、4点、または非該当(N/A)で評価します。あわせて、評点別の取組例を示した別添も用意しています。

取組項目は、AIガバナンス行動目標、AI事業者ガイドライン第1.1版、NIST AI 600-1(生成AIプロファイル)などを踏まえ、5領域・37項目で整理しました。ver1.1との主な差分は、一部項目のアップデートと、自律性の高いAIに関わるリスク管理に関する項目の追加です。5つの領域は次のとおりです。

  • ルール・プロセスの明文化(6項目)
  • 周知徹底・人材育成(5項目)
  • 組織体制整備(5項目)
  • 各リスク領域への対策(11項目)
  • 透明性・アカウンタビリティ確保(10項目)

主要なガイドライン類との対応も取組項目レベルで整理しており、AI事業者ガイドライン、NIST AI RMF、ISO/IEC 42001:2023の要素を幅広くカバーしています。

【回答者の傾向】

回答は、AIGA正会員のうち各業界を代表する企業から集まりました。立場別の内訳は、AI開発者24社、AI提供者20社、AI利用者13社です(複数選択した企業は、開発者、提供者、利用者の順で優先して分類)。業界もIT、通信、保険、証券、銀行、インフラ、製造など多様です。

57社のうち51社がAIを利用したユースケースを保有しており、そのうちAIエージェントを活用したユースケースは41件にのぼります。また、人によるチェック・修正を経ずに出力結果を社外に表示・提供するAIユースケースを持つ企業は20社に増加しました。

一方で、ユースケースを把握できていない企業の割合は、ver1.1の3%から7%へ4pt上昇しました。回答企業からは「SaaS組込み型のAI機能を捉えきれていない」「グローバル登録の仕組みはあるが実効性が曖昧」「部門間で管理方法が不統一」といった声が寄せられており、ユースケースの拡大に伴い、把握の難易度も高まっていることがうかがえます。

【全体結果:すべての領域で点数が向上】

ver2.0の全体平均は2.72点で、ver1.1の2.50点、ver1.0の2.51点から上昇しました。領域別の平均点は以下のとおりです。

得点分布の大きな傾向はこれまでから変わらないものの、「ルール・プロセスの明文化」と「組織体制整備」のスコアが3を超え、成熟が進んでいます。一方、AIエージェントなど最新のトピックに対するAIガバナンスは、ベストプラクティスの収集と自社への展開の両面でまだ道半ばです。

グループガバナンスの全体平均は2.47点でした。「ルール・プロセスの明文化」では、親会社・グループのルールを傘下企業に適用している事例が多く見られた一方、「透明性・アカウンタビリティ確保」は平均点が低く、子会社の意向を確認して方針を決める必要性が明らかになりました(「各リスク領域への対策」はグループガバナンスでは自己評価の対象外)。

【立場別・参加回数別の傾向】

立場別の平均点は、開発者3.04点(n=24)、提供者2.50点(n=20)、利用者2.47点(n=13)でした。開発者と提供者の割合が前回より増えており、比較的簡単に自社で開発できるAI等の利用が進んでいると推察されます。どの立場でも「ルール・プロセスの明文化」と「組織体制整備」は高い傾向にあり、既存の仕組みを活かして個別対策が安定したことで、組織的なガバナンス構築が可能になったと考えられます。一方、「透明性・アカウンタビリティ確保」は全体の傾向と比べて低く、AI利用者のみの立場の企業では平均2.0点と最も低くなりました。

参加回数別では、3回参加の企業が3.05点(n=22)と突出し、2回参加が2.49点(n=15)、初参加が2.53点(n=20)でした。継続的な自己診断が組織的な取組の強化に寄与していると推察されます。また、初参加企業も前回の全体平均に近い水準にあり、社会全体でガバナンスの底上げが進んでいる様子がうかがえます。

【領域別のポイント】

ルール・プロセスの明文化

「AIポリシー」(3.36)、「AI利用ルール」(3.60)など、ルール作りは進んでいます。一方、「ガバナンス全体の不断の見直し」(2.89)や「ハイリスクなAIへの対応」(2.65)には伸びしろがあります。取組例として、運用で課題が見つかった場合やガイドラインの改定をトリガーに随時社内規定を見直す事例や、ハイリスクの事前評価を行い、人が関与する仕組みや運用を止める仕組みの導入検討を促す事例が挙がっています。

周知徹底・人材育成

「社内ルールの浸透」(3.33)や「AIリスクについての周知徹底」(3.02)は広く行われています。他方、「活用段階に応じた人材要件の定義」(2.21)と「AIリスク管理を担う人材の育成」(2.04)は検討途上の企業が多く見られました。人事部門も関与して人員の増強計画やリソース確保の方針を共有し、組織的に取り組む事例もあります。

組織体制整備

「経営層のオーナーシップと役割分担の明確化」(3.39)など、責任者の明確化は多くの企業で達成されています。「インシデント発生時の対応フローの確立」(2.77)は、AI特有の対応フローの要否を含め、検討・整理中のケースが多く見られました。

各リスク領域への対策

個人情報(3.19)や知的財産権など、法令で規定されている項目は一定の整理・対策が進んでいます。他方、「AIの悪用への技術的対策」(2.28)、「AIに対する攻撃への技術的対策」(2.37)といった技術的なリスク対策や、AIエージェントの管理は道半ばです。

透明性・アカウンタビリティ確保

「透明性の確保」(2.95)や「監査可能性の確保」(2.81)は比較的高い一方、「第三者による技術面のリスク検証」(1.73)、「組織やルールに対する外部の視点からの検証」(1.88)、「環境・持続可能性への影響の考慮」(1.43)など、構造的な信頼性確保策に課題があります。AI利用者にとってのバリューチェーン全体を意識したガバナンスの実現も、今後の課題です。

【自律性の高いAIに対するガバナンス】

ver2.0で新設した「Q24:自律性の高いAIに対する取組」の平均は、開発者・提供者が1.67点、利用者が1.59点(いずれも4点満点)と、ナビ全体の平均2.72点を大きく下回りました。41社でAIエージェントのユースケースが確認され、活用が進む一方で、ガバナンスの整備はこれからという状況です。

【参加企業からの評価と今後の課題】

参加企業からは、「自社の課題を認識するツールとして極めて有益」「ver1.1との比較で進捗を実感できた」といった、取組状況の可視化に有用との声が寄せられました。一方で、次のような要望も出ています。

  • 次のフェーズに進むための検討事項や解決策のヒントの明示
  • エージェントガバナンスの具体化(「AI任せにしてはいけない操作」の定義、BtoC領域における未成年利用リスクなど)
  • 業界別・企業規模別のベンチマークや経年変化の可視化
  • グループガバナンス診断における、業種・規模に応じた記入例・ガイダンスの充実

AIガバナンス協会では、全体集計と取組事例集(取組内容提出企業限定)のフィードバックに加え、好事例の共同での深掘りや回答企業限定の座談会などを企画していく予定です。2026年11月にも次回の自己診断を予定しており、自己診断と協会活動への還元を繰り返すことで、会員全体のレベルアップ、AIガバナンスの実装に関する知見の収集、共有知化を進めます。