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2026年3月25日(水)、「AIGA Meetup #4」を実施しました。生成AIをめぐる政策議論が国内外で加速し、企業実務におけるAI活用とガバナンスの両立がますます重要な論点となる中、知的財産とAIをめぐる政策動向や、シャドーAI・ガバナンス人材といった会員企業の共通課題をテーマに、トークセッションと会員間の交流を行いました。
以下、イベントの様子の一部をお伝えします。
開催概要
主催:一般社団法人AIガバナンス協会(AI Governance Association)
日時: 2026年3月25日(水) 17:00-19:00
会場:日本橋ホール(日本橋髙島屋三井ビルディング内)
対象:AIGA会員
オープニング

登壇者
一般社団法人AIガバナンス協会 事務局次長 森開汰
冒頭では、一般社団法人AIガバナンス協会(以下、AIGA)の森より、活動報告が行われました。
協会のこれまでの取り組みを振り返りつつ、活動の着実な拡充について報告されました。「AIガバナンスナビ」のVer2.0自己診断に向けた改訂作業 や、「AI時代の経営意思決定とガバナンス戦略レポート」の英語版公表による国際発信の強化が進められている状況などの継続的な活動に加え、注目すべき成果として、1月末に公表した「『いつの間にかAI』のリスク実態調査」が挙げられました。シャドーAIの管理と活用に関する会員企業へのインタビューやアンケートを基にまとめられたもので、現在は回答企業による座談会を通じて、実態や対応に関するナレッジの集約が継続的に進められています。
あわせて、「AIGist(AIガバナンス専門人材)の育成・採用」に関するヒアリングと勉強会の始動についても報告されました。専門人材の採用・育成に既に取り組む企業へのヒアリングを踏まえ、情報共有とディスカッションを重ねる勉強会が実施されています。
その他、「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード(仮称)(案)」(以下、「AIプリンシプルコード(案)」)「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き(第1.0版)(案)」「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン充実に向けた改定案」といった各種政策文書へのパブリックコメント対応、AIガバナンスに取り組む方々をゲストに迎え、キャリアの現在地を伺うPodcast番組「ガバナン」のYouTube展開など、様々な取り組みが動いており、多様化する協会の活動がそれぞれ拡充し、成果に繋がっていることが印象づけられました。
このような多様な活動を通じて、会員企業が直面する実務課題と政策形成の接点を広げ、実装に根ざした知見の循環を生み出しています。今回のMeetupもそうした取り組みを踏まえた「会員間の対面での知見交換の場」として位置づけられました。

トークセッション① ー知的財産とAI、日本政府の政策アプローチのポイントはー
登壇者
一橋大学イノベーション研究センター 特任教授 市川 類様
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 岡田 淳様
一般社団法人AIガバナンス協会 業務執行理事 佐久間 弘明<モデレーター>
トークセッション①では、「知的財産とAI、日本政府の政策アプローチのポイントは」をテーマに、「Aプリンシプル・コード(案)」をはじめとした政策動向と今後の方向性について議論が交わされました。政策実務と国際動向それぞれに深い知見を持つ登壇者から、活発な議論が行われました。
前半では、「世界と日本の知財を巡る政策の現状」というテーマで、日本のアプローチの特徴と各国比較について議論がなされました。
岡田氏からは、知的財産をめぐる議論は大きく二つに分けて整理できるという視点が提示されました。ひとつは著作権法の解釈論であり、2023年から2024年にかけて文化審議会で考え方の取りまとめがなされ一区切りとなった一方、昨年には大手新聞社による訴訟など一定の新たな動きも見られる状況にあります。もうひとつは著作権法の遵守に留まらないAIガバナンスとしての知的財産保護の議論であり、透明性や対価還元を中心に昨年・今年にかけて議論が深まってきていると整理されました。
日本はいずれについても、イノベーションとリスク対応の両立を軸に、ハードローではなく任意の取り組みやソフトローを中心とするアプローチをとっており、その現れとしてプリンシプル・コードが位置づけられているという点が議論されました。

市川氏より、国際的な文脈における日本の立ち位置が提起されました。アメリカは自国のグローバルAI企業の存在によってデファクト形成の力を持ち、欧州はブリュッセル効果を背景にAI法による市場規律を敷く一方、日本は相対的に市場規模が小さく、国際的なルール形成に積極的に関与し国内指針に取り込むという戦略をAI法にも明記している点が独自であるという視点が示されました。
知財については、アメリカはフェアユース制度のもと数十件の訴訟を通じて判例ベースでルールが形成されつつあり、欧州は2019年の著作権指令改正とAI法による公表義務の導入が進んでいるのに対し、日本は著作権法の改正ではなく解釈で対応しつつ、エコシステム形成の議論に比重が移りつつあるという整理がなされました。
また後半では、「今後の注目アジェンダ」というテーマについて議論されました。
岡田氏からは、直近最大の課題としてプリンシプル・コードの最終化が挙げられた上で、その先の論点として「対価還元のエコシステム」の重要性が取り上げられました。日本のように学習が比較的自由な法体系においても、ライセンス契約のアレンジはありうる話であり、民々の契約がしやすい環境をどう構築・サポートするかが本来の論点である、という見解が示されています。特に、声優の声の権利をめぐって安心して許諾できる公式音声データベース「JVOXPRO(仮称)」の立ち上げが発表されたことなど、権利者側からも対価還元型のエコシステムを志向する動きが出てきている具体例が紹介されました。あわせて、対価還元を機能させる前提として、問題のある事業者に対するエンフォースメントのしやすさを支える環境整備も重要であるという点が浮き彫りになりました。
市川氏からは、日本の場合、プリンシプル・コードのようなガイドラインについて、その中身自体だけでなくて、むしろそれをどう海外に展開していくかの戦略が本質的に重要であるという視点が提示されました。広島AIプロセスの報告メカニズムには既に著作権への対応が盛り込まれており、こうした国際枠組みとの接続を知財政策の文脈でも広げていくことへの期待が語られました。あわせて、3月にホワイトハウスが公表したAI政策枠組みに関する立法勧告にも触れられ、「AIモデルの著作権学習は違法ではないとの立場を基本とし、司法判断を尊重しつつ議会は介入すべきでない。ただし、権利者がAI企業と集団交渉できるライセンス制度は設計を検討しうる」という趣旨が示されており、アメリカ流の民間交渉ベースのデファクト形成の方向性が明確化しつつあるという点が明らかになりました。

ディスカッションの最後では、企業へのメッセージと今後の方向性についても議論されました。市川氏からは、「2026年問題」と呼ばれる学習データ枯渇の文脈も踏まえ、クリエイター側もAI企業側も、権利か利活用かという二項対立ではなく、質の高いコンテンツを対価を伴って循環させる将来像を共に描いていく必要性が共有されました。
岡田氏からは、AIのもたらす影響は多層的であり、権利者にとっても人間が新たな創造的表現を生み出す可能性を広げることや対価還元のエコシステム活用という側面がありうるという認識が示されました。その上で、日本のソフトローベースのアプローチは事業者の自主的なガバナンスと信頼に支えられて成り立っており、プリンシプル・コードをはじめとした枠組みも、策定後の運用段階から積極的にコミットしていくことが会員企業自身のメリットにつながる、という期待が寄せられ、セッションは締めくくられました。

インタラクティブセッション


進行
一般社団法人AIガバナンス協会 事務局次長 上野裕太郎
トークセッション①に続いて、会員企業同士で直接知見を交換する新たな試みとして、インタラクティブセッションが実施されました。参加者は、申込時のアンケートで関心を示した二つのトピックについて、テーブルごとに分かれて情報共有と対話を行いました。
会場には、「規制対応と戦略(経営戦略)」「AIガバナンス実装のリアル(AIガバナンスナビ)」「ガバナンス人材の育成(AIGist勉強会)」「シャドーAI・リスク管理(いつの間にかAI)」の四つのテーマごとにテーブルが設けられ、各テーブルにはAIGA事務局のメンバーがファシリテータとして参加しました。参加者は二つのテーマを順番に巡る形で、先行事例の共有や実践上の悩み、ネクストアクションに関するアイデアの交換に臨みました。チャタムハウスルールのもと、特定の企業名を持ち帰らない前提で、各社の取り組みの背景や判断基準、現場での工夫について率直な意見が交わされました。
本セッションは、普段はオンラインの座談会形式で実施している知見交換を対面で行う場として位置づけられ、会員企業同士の直接的な接点を生み出す機会となりました。AIGAが「先行事例を持つ会社の紹介」や「類似課題を抱える会員との接続」といった問い合わせを日常的に受ける中で、会員間の相互学習の循環を強化する取り組みの一環として、今後の継続的な発展への期待が語られました。

知的財産とAIをめぐる政策議論が加速する中、本イベントでは理論と実践の両面から多角的な視点が共有され、会員企業が直面する課題解決に向けた具体的な示唆が得られる場となりました。AIGAは今後も、政策形成と企業実務の接点を広げながら、AIガバナンスの普及と標準化、そしてその社会実装に取り組んでいきます。


