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一般社団法人AIガバナンス協会(以下、AIGA)は、設立以来、AIの健全な利活用と社会的信頼のある実装を目指し、産学官の垣根を超えた連携を推進してきました。
このたび、AIGAへの参画企業・団体が100社を超えたことをご報告いたします。
本記事では、この節目を機に、どんな企業・団体が参画しているのか、直近の取り組み、そして今後の展望についてご紹介します。
多様なステークホルダーが参画するAIガバナンス「共創」の場

AIガバナンス協会は2023年12月に任意団体として発足してから、67社の会員企業とともに2024年10月に一般社団法人化の節目を迎え、外部連携や政策・制度への意見発信も含めた活動を充実させてきました。
毎月多くの企業から入会のご希望・お問い合わせをいただいており、2025年5月末時点でついに通常枠企業(※1)、SMB・スタートアップ枠企業(※2)を合わせた会員数が100社を突破しました。
※1: 資本金規模が1億円よりも大きい企業・団体
※2: 資本金規模が1億円以下の企業・団体
AI領域においては新技術・サービスを展開する中小規模の企業、スタートアップ企業も重要なプレイヤーです。AIGAは様々な規模・ビジネスモデルのAI関連企業が一堂に介してAIガバナンスについて議論・意見交換をすることができる一大フォーラムになりつつあり、その内訳も多様な業界から構成されています。

たとえば以下のような企業が参画しています:
- AI開発企業:OpenAI/Preferred Networks/IBM/Microsoft/Google/Amazon Web Services/NEC/NTTデータほか
- AIスタートアップ:Sakana AI/AVILEN/Citadel AIほか
- 通信:KDDI/NTTドコモ/ソフトバンクほか
- インターネットサービス:楽天/LINEヤフーほか
- 製造・メーカー:東芝/コニカミノルタ/本田技研工業/三菱電機/横河電機ほか
- 金融・保険:東京海上ホールディングス/SOMPOホールディングス/MS&ADインシュアランスグループホールディングス/三菱 UFJ フィナンシャル・グループ/みずほフィナンシャルグループほか
- メディア:毎日新聞社/スマートニュース/博報堂DYホールディングスほか
この多様性こそが、AIという横断的技術におけるガバナンスの議論に不可欠な視点の源泉となっています。
会員が語る、AIGA参画の理由
正会員としての入会希望の企業・団体の方々からは、以下のような声が寄せられています。
「昨今の生成AIブームを単なるトレンドに終わらせないためにも、AIガバナンスを日本社会全体に浸透させていく必要があると考えています。基盤モデルやAIソリューションを提供するベンダーの立場から、お客様に必要性を訴えかけてきましたが、このエリアは競争分野ではなく共創分野です。AIGAを通じて業界動向の共有をさせていただきたいと思い参画いたしました。」
─ AI開発企業 技術部門担当者
「近年、業務における生成AIの利用が普及する一方で、リスクも顕在化しており、AIガバナンスの重要性が高まっています。当社グループは、「AI事業者ガイドライン」に準拠した『AI基本方針』の宣言を予定していますが、社会情勢や法改正など、AIを取り巻く環境は常に変化していくと考えています。そのため、AIGAに参画し、最新の情報や動向を把握することで、AIガバナンスに関する知識をアップデートし、変化に取り残されないよう努めたいと考えております。」
─IT企業 技術部門担当者
「AIガバナンスの社内体制構築について、具体的な進め方やノウハウの蓄積が課題となっています。AIGAの活動を通じて先進企業の実践例を学ばせていただくとともに、報道機関として社会にAIガバナンスの重要性を発信していく責務を果たしたく、参画いたしました。」
─メディア企業 編集部門担当者
このように、AIガバナンス領域においては業界やバリューチェーン上の立場を跨いだコラボレーションや、元々の知見や規模によらずAIに関わる企業全体での技術・政策動向へのキャッチアップへのニーズが高まっています。
AIのもたらす便益とリスク管理のバランスをとり、この技術が社会的に受容される土壌をつくるためには、AIガバナンスを各社に「閉じた」課題ではなく、社会全体に「開かれた」課題として捉え直すことが不可欠です。こうした観点から、AIGAの門を叩く企業が増えていることが伺えます。
AIGAの直近の主な取り組み
このような会員基盤の広がりも受けて、AIGAでは、次のような活動を積極的に展開しています。
AIガバナンス自己診断ツールの開発
企業が自らのAIガバナンス成熟度を可視化・評価できるツール「AIガバナンスナビ ver1.0」を開発しました。この自己診断ツールは、AIGAが掲げる「AIガバナンス行動目標」に沿って構成されており、リスク対策、組織体制、人材育成、社内ルール整備、透明性確保などの観点から自己評価が可能となっています。
2025年6月には、このツールを活用したオンラインシンポジウムを開催予定で、実際の診断結果を基にした企業の取り組み事例や課題を共有します。
詳しくはこちら:https://www.ai-governance.jp/blog/event-0604
国内外の政策動向の変化を常に捉え、積極的に意見提出
グローバルレベルでAI政策が加速する中、AIGAは国内外の動向に注視し、政策提言活動にも力を入れています。たとえば、直近では以下のような意見提出を行っています。
これらの提言は、会員企業の声をもとにまとめられており、AI利活用と社会的信頼のバランスを取る政策形成への貢献を目指しています。
知見共有を促進するウェビナーやイベントの開催
さらに、AIGAは知見の社会共有を目的としたコンテンツの拡充にも注力しており、直近では、下記のような会員向けのウェビナーや対面イベントを開催しています。
- AIGA Spotlight:有識者を招いて1つのテーマを深掘りするイベント。直近では「AI事業者ガイドライン(第1.1版)改定のポイントと企業実務への期待」をテーマに、法務の専門家による解説を実施しました。
- AIGA Meetup:会員同士の交流と最新トレンドの共有を目的とした参加型イベント。前回は「AIエージェントを良い同僚にするには?」「AI政策の国際情勢を読み解く」といったタイムリーなテーマで議論を展開しました。
- 他団体との連携: 「AI時代における適正なパーソナルデータ活用の在り方検討会キックオフイベント」(複数団体での共催)、「生成AI時代のルールメイキングとビジネス戦略」(プライバシーテック協会主催)、「BSAカンファレンス『AI政策の現在地と信頼あるデジタル社会の未来像 ~国際協調と官民連携の在り方を巡って』」(ビジネス・ソフトウェア・アライアンス主催、6/5(木)開催予定)など、他団体との積極的な連携によりAIガバナンスの重要性と具体的な実装の道筋について発信しています。
いずれも、多くの方に参加いただき、現場のリアルな課題と知見が交差する場となっています。
今後のAIGAの活動に向けてについて
AI技術の進化は想像以上のスピードで進んでおり、この技術を「どう使うか」だけでなく、「どう責任を持って付き合うか」が、今や企業の競争力を左右する時代です。
AIGAが目指すのは、「AIガバナンスがあたりまえ」の社会の実現です。今回の100社突破は、社会変革に向けた本格的なスタートラインと思い、今後も歩みを進めていきます。
AIGAは、「AIガバナンス行動目標」の最初の項目として「AIガバナンスの民主化」を掲げています。AIの健全な発展は、いち企業やいち業界だけでは実現できません。AI開発者・提供者・利用者といったプレイヤー、政府、学界、それを取り巻く市民社会等の多様な立場の人たちが手を取り合ってこそ、本当に信頼されるAI社会が生まれると私たちは信じています。
こうした考え方にご賛同いただける企業・団体の皆様には、ぜひこのフォーラムへのご参画を検討いただければ幸いです。